EMDRって、どんなことをするの?

EMDRって、いったい、何をどんな風にするの?という素朴な疑問がおありかもしれません。今日は、できるだけシンプルにその問いにお答えしたいと思います。

まずは、クライエント様のいわゆる「生育歴や病歴」をお聞きし、治療計画を練ります。

次は準備段階で、EMDRの手続きや効果をご説明し、クライエント様にリラクゼーション法などを含んだセルフコントロールを様々体得していただきます。

そして、3番目に、トラウマ記憶に関連した否定的な考え、肯定的な考え、感情、身体の感覚など、今現在の状態を測定します。その後、適応的な解決に向けて、眼球運動や聴覚刺激、触覚刺激などを利用して、トラウマ記憶を再処理していきます。続けて、さらに眼球運動などを利用して、肯定的認知と処理された記憶の結びつきを強めていきます。それが済むと、トラウマ記憶に関連する身体感覚が残っていないかを確認して、完全な再処理とします。

ここまで来て、一つのトラウマ記憶が終了となります。クライエント様の意識をしっかりと「今、ここ」に戻していただきます。

なお、次回のカウンセリングの初めは、トラウマ記憶に関する不快感などの再評価をします。不快感が残っている場合は、3番目の箇所から続けることになります。

クライエント様の抱えるトラウマ記憶がひとつだったなら、たった1回の3番目の箇所から終了までの流れの中で、トラウマ記憶がトラウマ記憶でなくなり、適応的な解決となることはあります。ですが、多くのクライエント様はたくさんのトラウマ記憶を抱えながら、これまでを歩いてこられたサバイバーです。そうした場合は、特に周到に準備をし、3番目の箇所から再評価までの流れを繰り返し行いながら、辛いトラウマ記憶がトラウマ記憶でなくなっていく体験をしていただくことになります。

EMDRでは、クライエント様が持っている「リソース」を十分に活性化することに腐心しながら治療を進めてまいります。ですから、クライエント様が日常生活の中で、自身で身につけたセルフコントロールの方法を使うことが大きな力となっていくのです。

 

参考文献:こころのりんしょう アラカルト Vol27 No2 2008年 星和書店

アンドリュー・リーズ(太田茂行 市井雅哉 監訳) EMDR標準プロトコル実践ガイドブック 臨床家,スーパーバイザー,コンサルタントのために 誠信書房 2019年

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