EMDRセラピーに取り組む時、第1回目のカウンセリングから眼球運動を実施することはありません。眼球運動等の感覚刺激(他に、聴覚や触覚)を利用する箇所はEMDRセラピーのコアとなる部分ではありますが、その前の段階がとても重要となります。
この準備の段階で、クライエント様のリソースの開発と強化をしていくのです。様々なセルフコントロール法(セルフケア)を、しっかりと身につけていただきます。
リソースの開発と強化が十分になされると、クライエント様の状態が十分に落ち着くことがあります。これは、クライエント様の日々の努力が実って、準備が十分になされてきたということで非常に良いことです。ですが、この時、「もう大丈夫」とカウンセリングを終わりにしないでいただきたいと願って止みません。トラウマ記憶の再処理にはまだ進んでいないため、その後、何らかのトリガーに曝された時に、症状が再燃されてしまうのです。
外傷体験が長期にわたり、複雑であればあるほど、この準備にかかる期間が長くなるのは当然と言えるでしょう。しかし、焦らないでください。地道にセルフコントロール法(セルフケア)に取り組むことで、必ずや、現在より状態が安定してまいります。
準備が十分になされると、脳内の肯定的な記憶のネットワークによって、トラウマ記憶を再処理する際に、EMDRらしいスピードで治療的な効果が得られると考えられています。
EMDRのための準備